【About you】♯100 大兼菜摘
■Basic data
名前:大兼菜摘(おおかねなつみ)
アーティスト名:natsu.
生年月日:1991年6月4日
職業:デザイナー
■Questions
―デザイナーのお仕事とこれまでについて
去年12月4日、自分のブランドimustan enako を立ち上げた。
オープンして今で1ヶ月ちょっとだけど、おかげさまで順調にオーダーをいただいている。
ネックレス、ピアス、イヤリング、イヤーカフ、ブレスレットなどアクセサリー系全般を作っていて、完全受注制にしているので、製作には2週間~10日はいただいている。
自分用にという方もいらっしゃるし、恋人へのプレゼントとして注文してくださる方もいらっしゃる。
直接お会いして、あるいはメールでどのようなデザインにするかを打ち合わせして、その内容を踏まえて最適なデザインをご提案して製作している。
幼稚園のときからビーズアクセサリーを作ったりと、昔から何かを作るのが好きだったけれど、アクセサリーの製作を本格的に始めたのはここ1年くらい。
友達が「こんなの欲しいんだけど売ってなくて…」って言っていたのを聞いて、そのアクセサリーを作ってプレゼントしたら喜んでくれたのがうれしくて。
そこからアクセサリーをつくるようになった。
独立してひとりでやっていきたいという願望を持ったのは高2のとき。
ちょうど進路を決める時期で、やりたいことがなくて困っていた。
小さい頃からしていたピアノは好きだけど仕事としては考えられなかったし、英語の勉強が好きだけど勉強した先に何があるんだろう?と考えるとわからなかった。
海外で働きたいわけでも、CAになりたいわけでもなかったからね。
美術が好きで美学・芸術学を学びたいと思っていたけれど、芸術史や芸術が生まれた社会的背景を知ったとして、これも将来何に繋がるのかなーってわからなかった。
昔も今も、意味の無いことや意味の無い勉強はしたくないって思いがすごく強くて。
もちろん知識や教養は増えると思うけど、それだけではいや。
目指すものに対して直結した、目的の定まったことしかしたくない。
だから、ずっとどうしようって迷っていた。
そう思いながら、ある大学の美学芸術学科の「就職先一覧」を眺めていたら、やっぱり「学芸員」や「教師」といった仕事ばかり、、、自分のやりたいことじゃないなあと思いながらふと少し下を見ると、「その他にも」と小さい字で「グラフィックデザイナー」と書かれていた。
何これ?初めて聞いたけどなんかかっこいい!
そう思ってネットですぐに調べてみて、すぐに惹かれ、「わたし、グラフィックデザイナーになる!」って決めた(笑)
もともと雑誌が好きで、その中でもあの大きさでドーン!と載ってるカッコいいブランドの1枚広告が好きだったから、「あれを作れる人だ!やりたい!」って思って即決。
そのときに、いずれはデザイナーで独立してやっていこうって決めた。
でも、いざ入学して勉強してみると「あれ?こんな勉強してるだけで、わたしグラフィックデザイナーになれるのかな?」って不安で。
それを親に相談したらダブルスクールを薦められて、大学3年のときはグラフィックデザインの専門学校に通っていた。
けれど、授業の進度が遅く復習ばかりで、生徒たちも「大学が、、、」「仕事が、、、」って言い訳して課題をしてこない人ばかり。
最初は気にせず「自分は課題を100倍してやる!」って決めてガンガンやってたのだけれど、あげくの果てにはキャリアオフィスに「インターンに行かせてください!」と相談に行ったら「まだ早いから紹介できない」と言われてしまって。
斡旋してくれないなら自分で探す!と決めて、看板やポスター制作をしている小さなグラフィックデザインの会社にアルバイトとして入った。
まずはここでお手伝いしながら修行しようと思ったけど、いざ入ってみると何をしても「すごいねえ」「仕事早いねえ」と褒めてもらえた。
「え?こんなのでこの会社お金もらっていいの?」って思う場面が多々あって。
私は、「もっと細部にこだわって最高のデザインを目指したいと思っているのに、このままここに居ていいのかな?」と不安になってきた。
そんなときに出会ったフリーのデザイナーさんに「俺も一人でやってるし、一人でやってみたら?」って言われたことをきっかけに、改めて最初からフリーでいこうと決めた。
―デザインする際の考え方
本や映画をたくさん見て意識的にインプットしているというよりは、日常目に入る風景からヒントを得ていて、それらの要素を分析して引き出しにしまっているから、いざデザインするときに引っ張り出してくる感じ。
「そんなアイデア発想出来ていいなあ。」と言われることもあるけれど、私のデザインするものは0→1ではなく、すべて1→1。
たとえば、豆乳プリンを作るってなると、まずは今ある豆乳プリンをいくつか食べ比べてみる。
そして、それぞれの良いところや悪いところを細かな要素に分けて分析する。
「豆乳の濃さはこれが好き、温度はあれがベスト、器は別のやつがいいなあ」という感じにね。
それらの情報を分けてしまってあるから、いざ何かデザインするときに、それぞれのいいところを引っ張ってきて最適なものを作ることが出来る。
もちろん、「昔食べたおはぎのきなこがベストだからあれを使おう!」って別の対象から要素を引っ張ってくることもあるよ。
私のデザインは、ゼロからイチを生み出すものではなくて、全部いつか何か見たものや感じたものを再構成して作り上げているだけ。
―デザインの他の活動について
デザインの他には、モデルの活動もしている。
きっかけは、友達のファッションショーにモデルとして誘われたこと。そのとき一度だけレッスンをしてもらった先生に、「なっちゃん、モデルを目指したらいいのに!」と1年以上言っていただいてて。
そんなに言ってくださるのなら、ともう一度レッスンに参加してみたらすごく楽しくて。
先生にも「正直デザインは何歳になっても出来るけど、モデルには期限がある。いつまでも美しく居続けられるわけじゃないし、年齢制限があるから、するなら今だよ」と背中を押され、始めることにした。
あとは、もともと文章を書くことが好きだったこともあり、ライティングもときどきしている。
それと、ファッションブランドの販売員としても働くこともある。
デザインにおいてもモデル活動においても販売のお仕事においても何でもそうだけど、クライアントを驚かせることが好き。
クライアントっていうのは、お客さまだけでなく、私がその仕事をすることによって影響を与える人たちも含めて。
彼らの「大満足!」の1個上をいって、「わあ!」とみんなが驚いている顔を見たくて、いつだってそうした気持ちでひとつひとつに取り組んでいければなと思っている。
―自分の性格について
超ポジティブ(笑)。
どれくらいかって、急いでいて電車に間に合うかどうか微妙!ってタイミングで赤信号に変わったときに「ラッキー!休憩出来る!」と思うくらいに(笑)
あとはアホなんかな?(笑)「渦潮の中に入ったらどうなんの?」とか子どもみたいな質問をよくします(笑)
わたし、結構みんなに実際とは違ったイメージを持たれることが多くて、「バレエやってそう」とか「ブランド物持ってそう」とかよく言われるけど、違うよ(笑)一番おもしろかった のは、SNSのプロフィール写真を今のものに変える前、少しカッコつけたのにしてたら怖いイメージを持たれてしまって、初対面の人に「笑うと思わなかった」って言われたこと(笑)。
―ターニングポイントについて
人生で一番のターニングポイントは、高3のセンター試験の2日後に倒れて救急車で運ばれたこと。
もともと自律神経が弱くて失神することもときどきあったんだけど、今までで一番ひどくて、起きたときに記憶喪失になってた。
受験シーズンで勉強しなくちゃいけない!っていうのはわかってたけど、暗記してた日本史がほとんど頭から抜けてたり、携帯の使い方はわかるけどそこに登録されてる友達の名前を見てもピンとこなかったりで。
幸い、自由登校の期間だったから勉強に集中できてよかったんだけどね。
友達との記憶はほとんど戻らなかったから、卒業式も誰かの代わりに出席してるような気分で全然楽しくなかった。
友達は記憶を失った私を思って涙を流してくれたけれど、それでも私は泣けなかった。
そのときから、生まれ変わるとかじゃないけど、「さっきの自分は今の自分ではない」って感覚が生まれた。
実際、性格も倒れる前と比べたらかなり変わったみたいだし。
そして、過去に執着しなくなった。
将来の自分がより良く過ごせて、今の自分が楽しくあれるように、好き勝手生きるようになれた。
この出来事があったから、細かいことを考えすぎたりしなくなったし、過去に捉われなくなった。私がこんな自由人になれたのは、この出来事があったから。
―モチベーションについて
あまりモチベーションっていう概念が無い。
そんなもの関係なく、ずっと取り組み続けてる状態。
それはきっと、好きなことしかやってないからだと思う。
あとは、好きなことが何個も有るおかげで、ちょっと飽きてきたりイヤになったときは、別の好きなことに移れて気分転換しながら向き合えるからだと思う。
―将来について
グラフィックデザインやアクセサリーのデザインを続けることはもちろん、何でもデザイン出来るマルチデザイナーになりたい。
例えば、不要な肉を削いで必要な筋肉を付けるために鍛える、っていうような体づくりもある意味〝ボディデザイン〟と呼べるようなものも、デザインの一部だと思うし、考え方は同じだから。もちろん、他にライフスタイルの提案も出来たらいいなと思う。
何でも屋さんになりたいわけじゃないけど、なにか困ったときやなんか心地よくないなあって思ったときに、「とりあえずなっちゃん呼んでみよっか!」って思って声を掛けてもらえて、その人たちが心地よく生活をおくれる手助けをできるようになりたい。
世の中のごちゃごちゃをすっきりさせたいんだよね、わたしは。
自分の身の回りや心の整理整頓が出来てすっきりしてる人って、やっぱり表情が素敵だったりイキイキしてたりするでしょ。
そんな人が街中に増えたら気持ちいいもん。
目に入るものすべてがそうした素敵なものであれば心地いいし、今そう思える人やものが少ないなって思うのなら自分で作りたい。
■My note
「会ったことない人には『怖い人、クールな人』って思われてることが多い」と言うなっちゃん。
実は私も例に漏れずその一人だったから(笑)、はじめて会うときは緊張した。
けれど、会ってすぐに、よく話しよく笑い人懐っこいなっちゃんを見て、いい意味の裏切りを受けた。
彼女の話を聞いてると、すごくわくわくして惹き込まれる。
それは、彼女が自分の人生に責任を持って、自分の人生を全うしているからだと思う。
そしていつもどんなときも、何かに心動かされ心躍り夢を追って生きているからだと思う。
去年おっきな逆境を乗り越えて、彼女はより自由になった気がする。
これからも、かっこよくスマートに、それでいてチャーミングななっちゃんで居てほしい。
そして、世の中に無数の彩りを添えてほしい。