【EVENTレポ】堂島デザイン会議(2016/1/23)
昨年に引き続き、堂島デザイン会議に行ってきたので、レポを。
※記事内の写真は堂島デザイン会議公式サイト、堂島デザイン会議Facebookページ、ならびに主催者田中さんの投稿などから拝借しております。
▼昨年のレポ
堂島デザイン会議(http://dojimadesignkaigi.com/)は、主にクリエイターの方を対象としたイベント。
毎回新しいモノづくり・コトづくりに挑戦する若きトップランナーの方をゲストに招いて開催されています。
「堂島」とタイトルに付いてありながら、前回の開催場所は京都、今回の開催場所がなんばなのはちょいとツッコミたくなるポイントです(笑)昨日の会場はなんばパークス内にある家具屋さんでした!
▼会場だったHUGさん
インテリアショップでイベントって、なかなか斬新。
会場の椅子にはソファーもちらほら。こんなに参加者に優しい椅子、なかなか無い。
ただ、私は案の定慣れてないミナミで迷って到着が遅れてしまい、最後列だったのでソファーの恩恵には預かれませんでした(笑)
イベントは大盛況。
前売り券は完売、当日もこの人口密度。熱気がすごかったです。
今回のテーマは、「セルフプロデュース!」
ゲストはフリーランスPR/Web編集者の塩谷舞さんとクリエイティブディレクター/デザイナーの福嶋賢二さんでした。
イベントの構成は、お二人がそれぞれ経歴や実績、仕事へのスタンスについて話され、最後に質疑応答があるというもの。
まずは塩谷さんのターン。
塩谷舞さんは、1988年大阪出身。
京都市立芸術大学在学中にSHAKE ART!という団体を立ち上げ、関西の芸大生の横の繋がりを生み出し、アートとクリエイティブの情報発信をするフリーペーパーを刊行されました。大学卒業後は、上京しCINRA.NET(http://www.cinra.net/)を運営する株式会社CINRAに入社され、Webディレクターと広報として活躍。
昨年からフリーランスになられ、チーズタルトで有名なBAKE(http://bakecheesetart.com/)のオウンドメディア〝THE BAKE MAGAZINE〟を立ち上げられ運営中。
▼〝THE BAKE MAGAZINE〟
その他も漫画家さんなどのエージェントとしてPRやファン作りをサポートしている株式会社コルク(http://corkagency.com/)さんともお仕事されてたり、さまざまな媒体で執筆もされています。塩谷さん自身も「『セルフブランディング』というテーマで呼ばれているけれど、自分のテーマも肩書きも定まってない」とのこと。それだけ多彩。
そんな塩谷さんの根幹にあるのは「何かをするためにどう人を巻き込んでいくか、仲間につけるか」という姿勢。
スキルと知名度がある方だから一人でもできることは数多ありそうだが、塩谷さんは必ず何かをするときに仲間をまず見つける。しかもプロデューサー的な視点の持ち主のため、良きものを作るためにプロデューサーとディレクションに徹するような性格である。その原点は、演劇だ。
塩谷さんは、幼少時代から演劇をされていた。演劇は役者と裏方がいてはじめて成り立つもの。そしてその前提には脚本や音響、照明などさまざまな要素がある。その世界を知っているからこそ、強い個を集めて(あるいは個がそれぞれパワーアップして)自分の役割を果たす事でそれが調和し、100以上の力が、自分1人でやる何倍もの力が出せることを知っているのだと思う。そして、同時に観客の目も持っている。つまり「このプロジェクトはどう思われるのか」「どういった訴求が一番観る者を引きつけるのか」そういった観客視点の意識があるからこそ、「バズる」、言い換えると「それだけ多くの人間の心を揺さぶる」プロジェクトや文章を世に放てられるのだと思う。
大学時代、塩谷さんは「関西の美大生は情報発信力が弱いから、東京にナメられてる!というか、認識すらされていない!ちゃんと主張しないと息してないと思われる!」と危機感を感じる。そこで、SHAKE ART!というフリーペーパー発行を決意。
1人ではできない。仲間を募らなきゃいけない。
しかし、当時周りから「とっつきにくい印象を持たれていた」という塩谷さんは、「仲間を引っ張っていけるような引力のある人間に変わらないと!」と決意。ただ性格的に簡単に変われない部分もあったため、「キャラクターを演じよう」と決めたそう。
その際に「呼ばれやすく覚えられやすい名前」もひとつの武器だと思い、「しおたん」というあだ名を積極的に使うようになったそうだ。
「喋り掛けられやすく、周りが思わず助けたくなる人になろう」という気持ちは、そう決意されたとき以来ずっと持っておられるそう。仲間を見つけるための方法としては「誰も口にしてない共通のストレスを見つけて主張すること」ともおっしゃっていた。言葉にできないモヤモヤを誰かが言語化してくれたとき、人はその相手に付いていきたくなるんだという。
その他にも、仕事の相談が来たとき、「自分よりうまくできそうな人がいる仕事はどんどん相手に紹介していくことも信頼に繋がっている」という言葉も印象的だった。
塩谷さんは、ライター専業というわけではないが、「今現在Web上で熱量の高い文章を書ける人」というカテゴリがあれば間違いなくベスト3に入る人だと思っている。
そんな塩谷さんの記事は、いつも大きな話題になっている。
▼塩谷さんのブログ
ある程度Twitterをやっていて、Web界隈の方やライターさんをフォローされている方は間違いなくタイムラインで見かけたことがあるだろう。
これまでは「ぎりぎり炎上しない記事をテーマにやってきた」という塩谷さん。
しかし、先日更新されたこちらの記事は史上初めて炎上したという。
▼「メディアには影響力がなければいけない」
コンテンツマーケティングの流行、
オウンドメディア・ニュースサイトの乱立。
どこも「PV」と「バズ」と「たくさんのイイネ!」を追いかけている。
「PVを稼ぐのに一番手っ取り早いのは有名人への取材」といった背景から「取材させてください!」→「2-3時間相手の時間をいただいて取材」→「ライター乱立時代の世の中、文章がお世辞にも上手ではないライターが誤った文法などを使った記事を書いてリリース、拡散は取材対象任せ」といった循環もよく目に付くとのこと。そのとき感じた疑問と違和感と怒りを、真っすぐに詰め込んで業界に警鐘を鳴らしたのがこの記事だった。「反論や批判の声もたくさんあった」とのことだが、それ以上の共感も呼び、SNS上ではたくさんシェアされていた。 ※ちなみにしおたんさん自身は「取材されて自身をPRするよりも、取材する側に回りたい!」とおっしゃっていた。
続いて福嶋賢二さんのターン。
福嶋さんは1982年滋賀県生まれ。
大学院への進学を考えていた折に「同じお金を出すのなら北欧に留学したら」という友人のアドバイスからスウェーデンへ留学。その後、喜多俊之氏(http://www.toshiyukikita.com/)に師事した後、4年前から独立してプロダクトデザインを中心としたお仕事をされています。
※驚いたことに、大阪には同年代のプロダクトデザイナーは福嶋さんを含めて5人しか居ないらしい。
ただ、プロダクトデザイナーと名乗ってはいるものの、「モノの見せ方、広め方の部分まで手伝ってほしい」という依頼が多いそうで、実質はグラフィックデザインから展示会出展の際のプロデュースまで行われていらっしゃいます。
福嶋さんの作品は、斬新だけどどこか懐かしさを感じます。
たとえば、こちら。
※福嶋さんのサイト(http://www.kenjifukushima.com/)から拝借
これ、消しゴムのベストセラー「まとまるくん」だというのだからびっくり。
「25周年記念に大人用のまとまるくんを作りたい」という企業側の願いを叶えたプロダクト。こちらはロゴからパッケージ、そしてリーフレットまで福嶋さんが作ったそうだ。おしゃれ。このまとまるくん欲しい。
次に、こちら。
※福嶋さんのサイト(http://www.kenjifukushima.com/)から拝借
こちらは「ボールペンでかける和紙手紙」
生み出すにあたっては、色んな産地の和紙を500-600種類揃えて、ひとつずつボールペンやゲルインクとの相性を確かめていったそう。今後はこのプロダクトをより活かすためのコラボ企画も構想されているそうです。
その他、京都のイラストレーターさんと共同で生み出したプロダクトとして、「お札がぴったり入る和紙袋」なども。
※福嶋さんのサイト(http://www.kenjifukushima.com/)から拝借
発想がユニークで面白い。お年玉をもらったときに、すぐに何円かわかりますね(笑)
その他にも、「デザイナーの内輪にならないイベントを」といった思いから、昨年10月には神戸で「100人の日用品展」なども開催されている。
幅広いお仕事を手掛けられているだけあって、仕事の内容の中でデザインをする時間は1/3くらい、とのこと。他は販路開拓のための営業などに奔走されている時間が多いという。そういった視点から、「ガリガリとデザインだけをしたいのなら大きな企業に入った方がいい」ともアドバイスされていました。
そんな福嶋さんが独立当初に意識されていたのは、「東京でも、名古屋でも、呼ばれたらどこでも行く」ということ。それを見越して、独立1年目の交通費用に100万円を用意したそうです。また、理想から逆算する方式で、「半年に1回自分のギャラを上げていく」ということをずっと意識しているそう。「デザインの金額を下げて『安くで何でもしますよ』というスタンスでは、プロダクトデザイナーを目指す学生に夢を与えられない」という思いと、「フィーは信頼だし信用の証だから、金額を下げたらそこが揺らいでしまう。お互いにとってベストな仕事をするためにもギャラの交渉はしっかりとする」といった思いからだそうです。
プロダクトデザイナーさんというと、黙々と作ってらっしゃる口べたな方が多いような印象を持っていたのですが、芯を持ち、しっかりと主張をしながら、しかも茶目っ気と営業を欠かさない福嶋さんには、カリスマ性を感じました。
※プレゼンで時間が押してしまい「これで最後!」と出したスライドが間違えたスライドで、「あれ?」と言いながらスライドをめくってる際にプロダクトの紹介を挟んだり、最後には「こんなプロジェクトしましょ!」と塩谷さんやファシリテーターの方をメンバーとして構成した企画をスライドで出したりと、凝った演出で会場を沸かせていました(笑)
最後は、質疑応答のコーナー。
【塩谷さんへの質問】
■「言葉の引き出しを増やすために、あるいは良い文章を書くためにされている努力や勉強はしているか?」
→「流行のカタカナ・横文字や皆が使っているカッコいい言葉は使わないように心がけている。例えば食べ物に例えるなどして、できるだけわかりやすい言葉を使って表現しようとしている。」
■「取材をするときに相手の本音を引き出すために心がけてることは?」
→「相手の同業他社との違いを見つけること。また、そこに対してどんな意見・スタンスをその人・その会社が持っているのかも調べておく。たとえば、『あの会社と似てますよね!』って引き合いに出したところがバチバチの競合や相手の理想と異なるものだったら大変。私も『塩谷さんって〝キラキラ広報ブロガー〟ですよね!』って言われたら嫌だし。。。(笑)」
■「今までに一番バズった記事は?」
■「性格がひどく内向きな人間はどうやって生きればいいか?」
→「ひどく内向きな人もたくさんいるし、そんな人はインターネットにもたくさんいるし、そこに共感できるのも内向きな人だけ。内向きサービスとかも需要がある。外向きが全てだ!ってわけじゃないので、そのまま内向きを極めて生きてください!」
【福嶋さんへの質問】
■「学生の頃にやっておいてよかったことは?」
→「他の学科・学年・学校の方とつながってたこと。いろんな人と知り合っていたら、何に困ったとしても誰かに相談できる。」
■「キャラ作りしてますか?」
→「まったく意識していない。自分の色は無いと思ってるし、クライアントさんに合わせて変えている。問題解決ができて、いいモノが作れて売れれば、自分のキャラはなんでもいい」
【2人への質問】
■「著名じゃなかった頃どうやって会いたい人と会っていた?」
→塩谷さん「ライターの仕事のきっかけは、面白法人カヤック(http://www.kayac.com/)のイベントに行ってイベントレポートをまとめたこと。名刺交換などをしてもなかなか覚えてもらえないので、自分の出来ることで相手にうまみを提供する事が大事。」
▼そのときの記事がこちら
→福嶋さん「講演などに行った際には名刺交換をして、後で手紙を書くこと。何かを作ってる方や会社に見てもらいたいときには、提案や自分が作ったものを作って持って行く。」
■お二人にとってのセルフプロデュースとは?
→塩谷さん「『あやかった分は返す』PRは、媒体や有名な方にあやかることが多いもの。そこで借りた恩はその分相手に残るものを返すべし」
→福嶋さん「『相手を思いやること』プロダクトデザインは、クライアントの思いがあってこそ。相手が無いと何も生まれないし、相手とどうやってコミュニケーションをとっていくかが大事。」
かたや「受注から記事リリースまで一週間なこともある」Web、かたや「デザインからリリースまで1年以上掛かることもある」プロダクトデザイン。
色は違っても、「セルフプロデュース!」の極意に「相手・他者の存在」を共通して挙げていたお二人だからこそ、周りの人に愛され信頼され、ひとりで何かを進めていく以上の大きなインパクトを生み出していくことができているのだなあと思いました。