乳がん検診体験記〜「病気かもしれない」が教えてくれたこと〜

今年も、毎年1回の健康診断の季節が巡ってきた。

いつもは基本的な検診(身長・体重、視力、採血、心電図など)だけをおこなうんだけど、周りの同年代が婦人科検診にもたくさん申し込んでいたので、「なんか怖いけど、まあせっかくの機会だし。」と申し込んでみた。

 

そして検診の日。

順々にメニューをこなして、最後が人生初の乳がん検診。

エコー(超音波)で見てもらってるときに、おじいさん先生がこう言った。

「ん、しこりがあるな。2つもあるな。これはあかん。」

いや、あかんとか言うたらあかんやろ先生、なんて思いながら画面を見ると、わたしの目で見ても異物だと見てとれるものが画面に映っていた。

「紹介状を書くから、○○病院で見てもらうように」

 

お会計のときに、紹介状費を徴収され、その後翌週に大きな病院の乳腺外来に行くように指示された。

 

正直、そのときはかなり怖かった。

場所が場所だから、ということもあるし、何より「がん」っていう言葉が頭をよぎって。

わたしも病気に詳しいわけじゃないけど、「がん」というとなかなか抵抗・克服が難しい病気というイメージがあったから。

 

ざわざわしながら毎日を過ごし、ちょうど最初の検診から1週間後、指定された乳腺外来に行った。

大きな総合病院だから、病院内はいろんな外来に来た患者さんで、平日の朝でもごった返していた。

まず受付を済ませると、「少し待ち時間が長くかかるかも」という旨を伝えられ、看護師さんから数枚綴の紙を渡された。

その紙には、この病院の診察の方針(誤診などを無くすために、初診からあらゆる診療をするという旨)と「乳がんになったら」といった内容で手術の時期や手順、要する日数などが記されていた。

渡されてから1時間弱待って、ようやくマンモグラフィーの部屋に通された。

 

マンモグラフィーはエコーと並ぶ乳がんの検診方法のひとつで、両胸を圧迫してX線撮影をするもの。

石灰が散見されるかどうかで、初期のがんを発見できるとのこと。

ただ、20代のときは乳腺が発達しているので、どうしても映り込みにくいそう。

※それを聞いていたから、私も初診でエコーを選んだ。

 

上下・左右から両胸を圧迫されるのはかなり痛いと聞いていたし、担当してくださった方も「我慢できなくなったら言ってくださいね!」と言っていたのでだいぶびびっていたが、まあ紙一重耐えられる痛みだった。

良かったことは、マンモを実施した部屋にオルゴール音楽が流れていたこと。

おそらく患者さんを少しでもリラックスさせようという配慮からだと思うけど、あれは幾分か心を楽にしてくれた。

 

マンモが終わってからまた数十分待たされた。

その間、待合のところで近くにいた女性2人が「今後のがん治療の方法」について看護師さんから説明を受けていた。

わたしにも細かい内容が聞こえてくるほどだったので、これは「他の患者の不安を煽らない」ためにも、「がんと診断された方のプライバシー配慮」のためにも、個室などでするべきじゃないかと強く思った。

 

その後、ようやく医師のいる部屋に通された。

担当してくださったのは、30歳前後のキリッとした女性医師。

 

まず「マンモの結果を見る限りは異変はないけれど、映り込みにくいからこれだけでは判断できない」と伝えられた後に、エコーを実施。

「たしかにしこりがあるね。水の塊のような気もするけれど。」といいながら入念に調べられ、「念のために、悪い細胞がいないかも確認しておきますね。」と言われた。そして針生検へ。

 

針生検とは、その名の通り胸の患部に針を刺して細胞を採取し、がん細胞が無いか調べるというもの。

正直だいぶ怖くて、「この検診を受ける前に大丈夫でしょう、と言ってほしい」と思っていたけれど、その夢叶わず。

痛み的には採血とそんなに変わらない程度だったから耐えられたけれども、なかなかしんどい時間だった。

 

終了してから、先生にこう言われた。

「通常、水の塊であれば針を刺したときに水が出てくるはずなんですが、血が出てきました。時折、こうした場所に初期のがんができるケースもあるので、少し心配ではあります。結果は1週間後に出るので、また来週来てくださいね」

 

私はこの日にすべて診断が下ると思っていたので、「また1週間待たなきゃいけないのか、、、」という落胆が一番大きかった。そして、病院を出たらどっと疲れた。たくさん待たされるだけでも、色々悪い想像が巡ったり、「この検査痛そうだなあ、不安だなあ」と思ったりしてしまってかなりストレスが溜まるから。

 

もちろん、仕事もバタバタしてたし、プライベートも予定が詰まっていたので、幸いにほとんど考える暇は無かったんだけど、それでも毎日頭の片隅のどこかに「もしもがんだったら、、、」という気持ちが無いワケではなかった。

 

そして1週間後、再度病院へ。

朝一番の検診で、かつ今回は部屋に入るとすぐに結果がわかる、ということから当日は緊張で朝から腹痛になる始末。

 

早めに着いて、番号が呼ばれるのを待つ。

ちょうど9時に、呼ばれた。

 

中に入って椅子に座ったとたん、先生が一言。

「検査結果返ってきましたが、悪い細胞はいなかったんでね。嚢胞(のうほう)だと思います。だから、とりあえずは経過観察していきましょう」

 

すごくホッとした。

結局、早くも1年後の再診予定を決められ、診察は終了した。

 

 

 

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今回、大袈裟かもしれないけれど病気の予兆が見つかったことで、久しぶりに色々考えることがあった。

 

◎病は気から

過去にも経験していることではあるが、「病気かもしれない」という不安は自分を弱くさせる。

それは、目の前のことに集中できなくなったり、人の話がまったく耳に入ってこなくなったり。

何かで見たけれど、「乳がん検診で再診を受けた人のうち半数以上が鬱症状になっている」という統計もあるらしい。

ここへの対処法は「とにかく早く病院に行って原因を明らかにする」ことだと思う。

たぶん人間って(もしかしたらわたしだけかもだけど)、「未知のもの」を怖がる傾向がある気がする。

しかも、その「未知のもの」は時として「怖くないもの」かもしれない。

姿が見えれば怖くないものを見ないようにして怖がって、心を摩耗させるのはよくない。

 

◎検診は大事

さっきの話と重なるけど、やっぱり定期的に検診を受けることって大事だなと思った。

早く異変に気付ければ、大事に至る前に治療することもできる。

わたしも基本病院なんて嫌いだし、がん検診は怖くていやだなあと思っていたけれど、「時すでに遅し」にならないためにも、しっかりと身を守るためにも、ちゃんとチェックしてもらおうと思った。

 

◎いつ死ぬかなんてわからない

「がん」という言葉を聞いて、「余命」って言葉が過らなかったわけではない。

 

・もしがんだったとして、完全治療なんてできるのだろうか?

・そのとき何が犠牲になるのだろう?自分の体?もっと言えば仕事もお金もすべてかも。

・がんの生存率って幾らくらいなんだろう?

 

ぐるぐる思考は回る。

ここに関して詳しく調べたわけではないので、解は持っていないけれど。

 

小さい頃から体が強くなく、人より疲れやすかったりすることもあって、もともとあんまり自分が長生きできるイメージは持っていない。50歳まで生きれるかなー?って思ってる。

けれど、生き急いでるわけではなかった。

 

今回少し生死を考えたときに、「明日」とかだと言い過ぎかもしれないけれど、5年後自分が生きているかどうかなんて全然わからないな、ってすごく思った。

事件・事故・天災などに巻き込まれて命を落とす可能性だってあるし、次の検診のときに状態が悪化してる可能性だってある。(※がんは、食事や運動に気をつけて防げるものではないから)

その他の病気にいつなるかだってわからない。

 

だから、ちゃんと生きないとな、と思った。

すごく抽象的だけど。だから今日から何かが劇的に変わるわけじゃないけれど。

 

 

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最初の検診があった日とその2日後は、くしくも大学時代からの仲間の誕生日を祝う機会があった。

両方とも、本人に内緒でサプライズを仕掛けてお祝いをするもの。

驚きと喜びと再会が溢れる空間に居ることができて、本当にうれしかった。

4-5年前にはじめて出会ったときから変わらず、毎年のようにこうして一緒に年を重ねられていること。

その場にみんなで居られること。

変わらない場所と変わらない存在があることの幸せを強く感じた。

 

 

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きっとこの出来事は、いろいろと思いながらも行動に移せていない、くすぶるわたしへの戒めなんだと思う。

「本当にこのままでいいの?」「もっと生き急ぎなさい」というようなメッセージであるような気もする。

 

「命は有限だし、いつ終わりが来るかわからない」ってことを、

頭の片隅くらいに置いて、

もっとダイブしていければ、なんて思っています。

 

 

この思いが泡になって消えてしまわないように、文章に残してみました。