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【Books】「サラバ!」/西加奈子

第152回直木賞を受賞した、西加奈子さんの「サラバ!」を読んだ。
 

 

サラバ! 上

サラバ! 上

 

 

 

サラバ! 下

サラバ! 下

 

 

 
 
西さんの小説は、ただ1冊だけ読んだことがあった。
それは、「きいろいゾウ」。

 

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)

 

 

この小説は好きで何度か読み返したけれど、
特に西さんのファンという訳ではなかったし、むしろどちらかというと合わないなあ、と感じて数ページで閉じた本もあったくらい。
 
そんなわたしだけれど、「西加奈子」という人には興味があった。
華やかで美人な顔立ち。
どこか日本人離れしたオーラ。
そしてコテコテの関西弁(笑)
そんな異質な成分が合わさって出来た「西加奈子という人には惹かれていた。
 
そんな中、去年の春ごろスタンダードブックストア心斎橋店であったイベントに参加した。
お目当ては、関西出身の作家である西加奈子さんと津村記久子さんによるトークショー。
ふたりは、相変わらずドがつくほどの関西弁をかましながら、漫才師のようなやりとりをしていた。
正直、細かい話の内容は覚えてないのだけれど、あの日以来ふたりの作家さんに親近感が湧いて、
西さんの「円卓」と津村さんの「ポストライムの舟」を読んだっけ。
 

 

円卓 (文春文庫)

円卓 (文春文庫)

 

 

 

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

 

 

 
そんな、ファン!という訳ではないけれど、いつのまにか応援したくなる存在になった西さんが、今回直木賞を受賞された。
だから、ミーハーに読んでみることにした。
 
最近は、面白い!と思える本になかなか出会えなかったこともあり、
あとは節約の意もあり(笑)で、本を買うってことをあまりしてなかったのだけれど、
この「サラバ!」は自分でお金を払って買って、日常のひとときの中で読むべきだというような気がしたのでそうした。
 
日曜日、帰省帰りのバスの中で上巻の半分を読み、
家に着いてから上巻の残りと下巻の1/3を読み、
そして月曜日に読み終えた。
 
主人公は、今まで当たり障りなく生きることで自分を守って来た青年。
母や姉にはじまる周りの登場人物がなかなかに破天荒すぎた環境で育ってきたため、
彼は人と違うことや目立つこと、思いのままに行動をすることを悪しきことだと思い、
彼らを反面教師として生きていきながら、幼少・青年時代をやり過ごしてきた。
 
けれど、ふと人生の中盤に差し掛かったとき、彼は気づく。
何かを求めるではなく、何かを避けながら生きてきた自分には、本当に信じられるものが無い、と。
自分が拠り所にしていた居場所が形を失っていく中で、彼は孤独を突きつけられるのだ。
そんなときに彼に光を見せてくれるのは、かつてアイデンティティを決めつけられるほどに影響を受けた、忌まわしきあの姉だった。
そして彼ははじめて、自分の足で歩いてゆく。
 
 
ざっくーり話すとこんな感じの話なのだけど、本当に喜怒哀楽というか人生の幹がたくさん詰まった小説だった。
 
彼が忌み嫌っていた人たちは、みな自分の信じるものがあるがゆえに対立していたこと
誰かを信じることや信じさせてくれる存在が居ること、居場所があることは確かに幸せだけど、
それらは完璧なカタチで一生自分に寄り添ってくれるわけではないことを知ること、
「誰かと私」の間には確かに関係性が生じるし、そこで相対しているところに自分のアイデンティティが存在するのは確かだが、
「私ひとり」になったときに残るアイデンティティこそが自分であること、
などなど、、、、
 
そーんなものが詰まってるものだから、思わず涙腺を揺さぶられた。
 
 
誰かになりきり、誰かの人生を疑似体験できること。
ときに自分とよく似た、ときに自分と正反対の架空の人間に寄り添うことを通して、自分という人間への新しい気づきを得ること。
 
それが、小説ないし物語の醍醐味だと思う。
 
 
この小説のラストには、確実に希望が溢れていたし、わたしはこの物語を読んで、もっともっと言葉を紡ぎたいと思った。